
優しきブレードランナー
(2009-02-05)
近未来。アンドロイドが実用化され、日常的に見られる街。
もはや外見では人間と見分けがつかない、そんな境界が曖昧な世界。
それを自己存在証明が危うくなる恐怖とサスペンスで描いたのが"ブレードランナー"なら、
そこに生まれる交流と優しさを描いているように思えるのが、この"イヴの時間"。
とある街中の喫茶店。そこにあるルールは"人間とロボットを区別しないこと"。
外では頭上に天使の輪と思しきリングを付けて、機械的に対応するアンドロイドも、
店内ではリングを消して、表情豊かに会話する。
そんな特異点とも言える場所で何が生まれようとしているのか。
15分とは思えない密度と、予想外に豪華だった声優陣。
2話では何やら意味深な伏線も張られ、先が非常に楽しみです。
これを見た後でも、
「とはいえ機械に感情や交流を求めるのはおかしいだろ。所詮、プログラムだし」
と即答できる人は、人間味を失いつつある。そんな気にすらなってきます。おすすめ。
「人間←ロボット」ということについて。
(2009-01-12)
吉浦康裕の『イヴの時間』第1話。
人間が人間と変わらない人型ロボットと暮らす世界。
主人公のリクオはロボットとの接し方に疑問を抱いていたある日・・。
おもしろい作品です。
人間と変わらないロボットを見分ける方法は頭にリングがあるか否か。しかしそれを取れば人間と同じ姿なのだから人型ロボットを「使う」という行為にリクオが戸惑ってしまうことに激しく共感できる。そんなある日、彼の家のロボットサミィは喫茶「イヴの時間」に出入りしていることがわかる。ここでのルールはただひとつ「人間とロボットを区別しない」ということ。リクオは店内にいる客はロボットなのか人間なのかわからない。でもひとつわかるのは皆、人間だとかロボットとかそういうのは関係ない、ただ自然な姿がそこにあるということだけだ。
映像・音楽・カメラワーク共にセンスが良い。
とくに光の加減が絶妙で鮮烈な印象を受ける映像は、一気にこの作品に引き込まれてしまった。この作品でなにか感じることは人それぞれだが、私はロボットはもしかしたら人間よりも相手を知ろうとする気持ちが強いのではないかと思いました。なぜそう思ったか。それは本編をぜひ御覧になって頂きたい。
紙ジャケでブックレットなし。メニュー画面もなし。
あるのは本編ディスクのみ。
アニメという媒体で見れる嬉しさを感じた作品です。オススメ!
ヒトとプログラムの間で
(2009-01-09)
「ペイル・コクーン」の吉浦康裕氏の新作と聞いて見てみました。
舞台は...たぶん、未来の日本。アンドロイドの普及により人間とロボットの区別が曖昧になり、様々な問題が起こり始めている時代。主人公の高校生リクオはある日、所有するアンドロイド・サミィの行動に疑問を感じ、友人マサキと共にカフェ「イヴの時間」へ乗り込む。そこは人間とアンドロイドが、互いの身分を隠して交流する場所。二人はそこでアキコと名乗る快活な少女に出会うが...。
「ロボットに心はあるか」というSFで良く描かれるテーマを扱ってはいますが、背景、小物、そして人々の生活風景を丁寧に描写しているため、ありがちでない丁寧な一品に仕上がっています。15分という短い時間ながら、密度の濃い、センスの良い作品です。
カフェ「水のコトバ」を思わせる空間で綴られる、ヒトとロボットの物語は全6話だそう。続きを楽しみに待ちます。
見せ方がうまい
(2009-01-06)
テーマ的にはそんなに珍しくはないのだろうけれど、それをどう見せるかが非常にうまいとおもう。
web配信の第一話を見てからはまりすぎちゃって初めてコミケに行くくらい。寒かった。
続きが気になるけれど先は(本当に)長いのでその辺を考えてうえで、。。
ありがちなテーマを魅力的に演出している力作
(2009-01-05)
アニメに限らず、小説や映画などで散見されるテーマを扱っている作品ですが、本作品の特徴として挙げられる点は、一つの世界の中に絶対ルールの敷かれた隔絶した二つの世界を並置しているという事だと思います。
一つは、人間に絶対服従のロボット三原則の敷かれた『現実世界』。そしてもう一つは、人間とロボットの間に存在する隙間を完全に取り払った喫茶店「イヴの時間」。
この外界からの干渉を一切拒絶した二つの世界を平行して描いていき、その対比効果と世界観設定を巧みに利用することによって説得力を増大させております。
キャラクターの表情や何気ないセリフの一つ一つでも、重みがまるで違って感じます。
例えば、アキコが第1話にて喫茶店で見せた彼女の笑顔を見れば、誰しもが普通の女の子として捉えると思います。
しかし、一度喫茶店を出れば頭上に浮くリングを映すという単純な描写一つだけで、主人公らと視聴者共々、一瞬にして『現実』へ引き戻される。
喫茶店で見せる彼ら(彼女ら)の十二分に人間的と呼べる表情、紡ぎ出された言葉一つ一つが強烈に脳裏に焼き付けられます。
それらがプログラムから導き出された答えなのか、人間同様の感情によるものなのか......普遍的ではありますが深く考えさせられます。
一見すると音楽CDかと見間違うほどの小型の紙製ケースにDVD一枚を封入しただけで、特典といった類のものは一切無し。
これはDVD1枚にすべてが詰まっているという、制作側のメッセージでしょう。
1話あたり15分という短さを感じさせない、濃縮されたストーリーの展開する傑作です。
生産量が限定されているようですので、購入の際はお早めに。